アドバイスするな。たった今から使える部下が育つ”指導のコツ”
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「なんで部下に答えをアドバイスしたのに、できないのだろう」

「えっ??あんなに良いアドバイスしたのに、部下が反対の行動をした」

 

仕事が中途半端にデキる上司に限って、このような質問が多い。

「最短ルートのアドバイスを部下に教えたのに、できないアイツが悪い」と、周囲に漏らすようになる。

 

私も当時は部下に相談された時に、「こんなに極上のエッセンスを答えてあげたのに、なんで分からないの、なんでその通りにしないの!」と思っていた。

のちに非常に傲慢な考えだと気付かされた。

 

まず「自分と他人は違う」ということを、強く認識しなければならない。

 

あなたのアドバイスは、自分が良いと思っているだけで、部下はピンとこないかも知れない。

つまり自分中心で物事を考えるのではなく、部下中心で物事を考えてアドバイスしていかなければならないのだ。

 

ここまでが普通の一般論だろう。

上司は、絶対に部下にアドバイスをしてはいけないのだ。

 

アドバイスではなく、指導が最も大切なのである。

部下中心で物事を考えてアドバイスするのは、中途半端な上司がするもの。

だがデキる上司は部下にアドバイスなどせず、部下に”指導する”のだ。

 

指導とは、

『部下自身の内側から”自身で答えを導かせる”のが指導である』

 

これができるようになると、上司自身が「なんでこんなにアドバイスしたのに、行動してくれないんだよ」と、嘆くこともなくなる。

 

アドバイスより指導が最も大切なのである。

 

アドバイスでは決して得られないものが、3つある。

部下自身が決断することで、アドバイスでは手に入らなかった”責任感”が生まれる。

 

上司の指導の下、部下自身が自分で決断することで、部下に『責任感』が発生する点にある。

 

上司アドバイスで部下が失敗した時に、部下はあなたのせいにする可能性がある。

だがあなたの指導の下、部下が自分で導き出した答えだと責任感が生じて、上司のせいにはできなくなる。

 

他責の主な原因が、人からのアドバイスである。

指導のメリットは部下自身で判断させ、決断させることにある。

だからこそアドバイスにはない責任感が生れるのだ。

 

自分で出した結果だからこそ、”成功体験”を積むことができるのだ。

上司のアドバイスで部下が成功した時は、部下は”あなたのおかげ”で成功したと思い、成功体験を積めない可能性がある。

 

だがあなたの指導の下、部下が自分で導き出した答えだと、自分のおかげで成功したと思い、成功体験を積むことができる。

 

私もそうだったが、上司のアドバイスを忠実に受けて成功しても”操り人形”に思えて、嬉しくなかった。

だがデキる上司に同席した際に私が受けたのはアドバイスではなく、質問という指導だった。

私の中にある答えを指導によって引き出され、自身で導き出した答えを発言していた。

 

上司からのアドバイスではなく、自分の出した答えで結果を出せた時は本当に嬉しかった。

 

その指導が病みつきになり、デキる上司にいつもくっついて回った結果、成功体験を積むことができた。

 

成長した部下は振り返った時に上司への深い感謝に気付くのである。

部下に下手なアドバイスをせずに、成功までの道のりを指導してあげるとプチ成功を与えることができる。

そのプチ成功を何度か重ねた先に、大きな成功が待っている。

 

そのプチ成功の際にあなたに一つしてあげて欲しいことがある。

それは部下の成功体験を純粋に喜んであげる。

たったこれだけで、部下が成長した際に感謝されるようになる。

 

成長した部下が部下を持つようになった時に理解できるはずだ。

アドバイスではなく、指導を通して”個を尊重”していたことに気付くはずである。

人はその立場にならないと、本当の意味で理解できないことが多い。

 

その立場になってやっと優しさに気付くのだ。

その瞬間、部下から深い感謝を得られるのである。

 

プチまとめ~手に入れた3つの先にあるものは?

簡単にまとめると、指導のおかげで下記のメリットがある。

 

部下に責任感が生まれる。

■部下に成功体験を積むことができる。

■部下から感謝されるようになる。

 

アドバイスでは決して得られないものである。

指導することで感謝される上、”相手に負荷なく思い通りに動かす”こともできるようになる。

 

これが一番相手もあなたもハッピーな方法。

アドバイスを捨てて、指導を一緒に身に付けていきたい。

 

本題に入る前に、あなた自身が『アドバイス』と『指導』について知ろう。

アドバイスとは、忠告・助言・勧告を行うという意味である。

忠告とは、相手の悪い点を指摘して改善させるように促すもの。
助言:「この方がいいよ」と助け船を出す。
勧告:事前に注意を促す。

ご覧の通り、アドバイスした相手がどう動くのかは全く関係ないことが分かる。
上司が部下にアドバイスをしても、部下が聞き入れるか否かは別問題である。

目的の矢印が上司→部下になっているのが分かる。

 

指導とは、その字が示すように”目的を指し示し、導くもの”である。

指導:ある目的・方向に向かって教え導くもの。

目的の矢印が部下→上司になっているのが分かる。

 

上司からの一方通行のアドバイスは、ただ単に本人の自己満足以外の何物でもない。

部下から上司の目的に歩み寄っていく指導は、部下の為を思った育成方法である。

 

この違いが分かればあとは簡単。

相手の心の内側から指導で引き出すだけである。

 

指導の心がけは、部下が失敗した時の”質問の仕方”にコツがあった。

あなたも30代になると必ず部下を持つようになる。

もしかすると、もっと早い段階で部下を持つかもしれない。

 

 

あなたは部下より仕事ができるから教える立場になったわけだ。

このことを前提に強く認識してもらいたい。

 

もし、上司より部下の方がすこぶる仕事ができた上に、人格者だった場合にはあなたの部下では収まっていないはずだ。

 

つまり、”部下はあなたより優れていない点が多い”はずだから部下でいるわけだ。

もちろん部下だから失敗する。

その失敗の内容を聞いたあなたは”的確”に”最短で解決”できる方法でアドバイスするはずだ。

このポイントがボタンのかけ間違いを起こす大きな分岐点である。

 

あなたにとっては的確で最短な道かも知れないが、その部下からすると最短でも何でもないかも知れない。

なぜなら、あなたと他人は性格もスキルも生きてきた環境も、全て違うからである。

 

つまりあなたの価値観を、あなたとは全く違う人間にアドバイスしても無意味なのだ。

 

では、価値観の違う人から相談を受ける場合には一体どうすればよいのか。

 

質問をすることによって、相手の内側からあなたの望むものを引っ張り出してあげればいいのだ。

 

あなたの目的地に相手が来るように仕向けるのが、本当の部下への指導。

たったこれだけで、相談した部下は自分自身の中から答えを出して、自身の口から発言するようになる。

 

その質問の仕方を具体例を交えてみてみよう。

 

真似するな!デキない上司が部下に使うアドバイスの具体例。

 

相談された際にすぐに答えを言ってしまう上司がいる。

痛い程に気持ちは分かるが、あなたの正解は必ずしも相談相手の正解とは限らないということを念頭に入れて欲しい。

 

例えば部下が商談で失敗してしまった際に、あなたが相談を受けた例を取り上げよう。

 

部下:「契約頂けませんでした」

上司:「営業は断られてからが勝負だ。なぜ契約しないかをお客様に聞いたか?」

部下:「はい。申し訳ありません。聞けていません。」

上司:「契約しない理由を解決するのが、お前の仕事だろ。契約しない理由を聞かないで返ってくるやつがいるか!契約しない理由を一番先に聞くのが営業の仕事だぞ。」

部下:「大変申し訳ありません。以後気をつけます。」

 

極端ではあるが、これに似たアドバイスの現場をよく見ていた。

「契約しない理由をなくすのが営業の仕事だ」と、上司が言うのも分かる。

これは単なるアドバイスである。

 

”部下の内側から答えを出す”指導の具体例はこちら。

アドバイスではなく、答えを導いてあげる質問を見てみよう。

部下:「契約頂けませんでした」

上司:「なんで契約できなかったの?」

部下:「努力が足りていなかったです。」

上司:「どんな努力が足りていなかったの?」

部下:「えっと、、、きちんとお客様の要望を掴めていなかったです。」

上司:「なぜお客様の要望を掴めなかったの?」

部下:「えぇっと、私がきちんとお客様に要望を聞けていなかったからです。」

上司:「お客様の要望や不安な点を聞けていなかったんだね、次はどうするの?

部下:「はい!次はきちんと怖がらずに要望やお客様が不安に思っている理由を聞きます。」

上司:「そうだよね。お客様の不安を解決して、契約しない理由をなくすのが営業の仕事だよね。次、トライしよう!」

 

このように契約出来なかった理由を部下から引き出してあげるのだ。

失敗した自覚があるのだから、責めても仕方がないし、アドバイスしても意味がない。

なぜなら失敗した理由は『本人が一番分かっている』からである。

もし分からなくても、部下本人に考えさせるのがベストなのだ。

経験上、聞けば90%以上は自覚して答えてくれる。

 

部下が自分のミスときちんと向き合った上で、上司と約束すると守らざるおえない。

先ほど言えば「はい!次はきちんと怖がらずに要望やお客様が不安に思っている理由を聞きます。」と。

 

部下自らの言葉で発言したことだからこそ、反省して次の行動に繋がるのだ。

これがアドバイスにはない、指導の力である。

 

上司から頭ごなしに「これをしろ!」と言われるから、反発精神が生まれて行動しないだけの話だったのだ。

 

【プチまとめ】具体的な指導の定型文をみて、使いこなそう

指導するにあたっての質問。

「なぜ~なのか?」

■「どんな~なのか?」

■「なぜ~しなかったのか?」

■「だから次はどうするのか?」

 

たったこれだけで指導ができるようになる。

アドバイスを捨てて、指導に今から切り替えてみよう。

 

ぜひ指導の質問を愛用してみて欲しい。

アドバイスでは得られなかった部下の反応が垣間見えるはずだ。

 

「あなたと話すのが心地よい!」と感じるのは指導のおかげだった。

子供の勉強も全く同じ。

子供に「勉強しなさい!しなさい!」と言ってもしないだろう。

 

「なにになりたいの?」「だったら今なにした方がいいかな?」と質問して、”勉強”という言葉を子供の口から出させると、行動する確率がグンッとあがる。

 

「なぜ?」という質問をして、相手から答えを引き出すと、行動してくれる。

万が一失敗した原因が分からないとしたら、あなたが求める答えに辿り着くまで、ヒントを与えながら質問してみよう。

 

これが出来るようになったら、子供も部下もあなたと話すのが心地よくなってくるはずだ。

なぜならアドバイスのように自己肯定感を傷つけずに、相手から「なぜ?」を引き出せるからである。

誰でも自分で答えを出せる方が身体に、スッと入ってくる。

 

今、この瞬間からアドバイスをグッと堪えて、質問する側に回ろう。

部下の態度が目に見えて尊敬の眼差しになるだろう。

これだけはお約束する。

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